LOUIS MALLE'S 8 FILMS X ルイ・マル8作品

 

LES AMANTS恋人たち1958 / 89 分/ フランス撮影:アンリ・ドカエ / 音楽:ブラームス出演:ジャンヌ・モロー、 アラン・キュニー

若く美しい有閑な婦人が、偶然知り合った男と純粋な恋に落ち、駆け落ちするまでを描いたメロドラマ。「死刑台のエレベーター」に続き、ジャンヌ・モローを主演に、アンリ・ドカエを撮影監督に迎えている。閉塞的な日常生活から飛び出した男女の不倫愛を、ヨハネ・ブラームスの弦楽四重奏の静謐な調べとともに、優雅に描いている。ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞受賞作品。

ZAZIE DANS LE METRO地下鉄のザジ1960 年 / 93 分/ フランス美術:ウィリアム・クライン 出演:カトリーヌ・ドモンジョ、フィリップ・ノワレ

母親に連れられパリにやってきた少女ザジは、叔父に預けられるが、彼女の楽しみは地下鉄に乗ることだった。だがストで地下鉄が動いていないと知ったザジは、ひとりで街に繰り出してしまう…。映画化不可能とも言われたレイモン・クノーの同名小説を映像化。ザジの一大冒険を描いた、スラップスティック・コメディー。ルイ・マルが仕掛けた風刺の効いたユニークな映像は永遠に色褪せることはない。

LE FEU FOLLET鬼火1963 年 / 108 分/ フランス / モノクロ撮影:ギスラン・クロケ/ 音楽: エリック・サティ出演:モーリス・ロネ、ジャンヌ・モロー

アルコール依存症のひとりの男が自殺するまでの二日間を克明に綴った作品。人生に絶望した男の心理を短い会話と緻密で冷徹な演出で見事に描き出している。人生に横たわる空しさと虚ろさを凝視してしまった人間の悲劇と孤独を痛感させられる。エリック・サティが奏でる繊細なピアノと共に描かれるルイ・マルの名作のひとつ。ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞受賞。

LE SOUFFLE AU COEUR好奇心1971 年 / 118 分/ フランス = イタリア音楽: チャーリー・パーカー出演:ブノワ・フェルレー、レア・マッサリ

14歳の少年は産婦人科医の父を嫌い、若く美しい母に強く惹かれている。彼女の美しさは彼の誇りでもあったが、彼女は他の男と不倫しているようだった。やがて男と分かれたことを知った少年は…。近親相姦という衝撃的な題材でありながら、チャーリー・パーカーのジャズの調べとともに、思春期の少年の心理と成長を軽妙かつ繊細に描かれている。マルの自伝的要素を含んだ作品でもある。

LACOMBE LUCIENルシアンの青春1973 年 / 140 分/ フランス = 伊= 西独音楽: ジャンゴ・ラインハルト出演:ピエール・ブレーズ、オーロール・クレマン

舞台は第2次世界大戦時、ナチス占領下にあったフランス。不遇な生活を送っていた17 歳の青年ルシアンは、レジスタンスに入ろうとするものの、拒まれてしまう。その後、ある出来事をきっかけに、ナチスの協力者になってしまい、次第に人間としての心を失っていく。だが美しいユダヤ娘と出会い、本来の自分を取り戻すのだが…。優しくも悲しい魂のふれあいを描いた、明日なき若い二人の青春ドラマ。

BLACK MOONブラック・ムーン1975 年 / 92 分/ フランス = 西ドイツ撮影: スヴェン・ニクヴィスト出演:キャスリン・ハリソン、J・ダレッサンドロ

近未来、女と男の間で激しい戦闘が繰り広げられていた。一人の少女が男たちに追われ、森に佇む一軒の屋敷に逃げ込むのだが、そこには寝たきりの老婆、双子の姉弟、15人の子供たちと動物たちが暮らしていた…。ルイス・キャロルの『アリス』をモチーフにした、めくるめく迷宮感覚、残酷なユーモアとめまいにも似た幻視感があふれる壮大な実験作。セザール賞撮影賞、音響賞受賞。

AU REVOIR LES ENFANTSさよなら子供たち1987 年 / 103 分/ フランス = 西ドイツ撮影: レナート・ベルタ 音楽:シューベルト出演:ガスパール・マネス、ラファエル・ファジト

1944 年ナチス占領時代のフランス。12 歳の少年ジュリアンが通うカトリック寄宿学校に、ジャンという少年が転入してくる。仲良くなった二人であったが、ある日ジュリアンは、ジャンが偽名を使って転入してきたユダヤ人であることを知る…。ルイ・マルの自伝的色彩が濃厚な悲しくも心温まる感動作。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞、LA批評家協会賞外国語映画賞、英国アカデミー賞監督賞ほか多数受賞。

MILOU EN MAI五月のミル1989 年 / 107 分/ フランス撮影: レナート・ベルタ出演:ミシェル・ピコリ、ミュウ・ミュウ

南仏ジェールのヴューザック家の主の夫人が死んだ。長男のミルは、母親の死を兄弟や娘達に伝える。フランスが沸き立っていた五月革命最中、緑豊かな田舎町を舞台に、母の葬儀のために集まった一家の様々な人間模様を軽快に、時に切なく描いた作品。人間への愛情と優しさを、ほろ苦いアイロニーを織り込みつつ、繊細な描写で綴ったルイ・マル円熟期の最高傑作。