STAFF&CAST x スタッフ/キャスト

監督・脚本 ルイ・マル

1932年フランス・ノール県テュムリー生まれ。パリのイデック(映画高等学院)在学中の53年、海洋学者ジャック=イヴ・クストーに雇われ3年に渡りカリプソ号に乗り組む。クストーとの共同監督作「沈黙の世界」('56)は、カンヌ映画祭パルムドール、米アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞を獲得。そして弱冠25歳、ヌーヴェル・ヴァーグのさきがけと言われる初長編映画「死刑台のエレベーター」('57)で鮮烈にデビュー。続く「恋人たち」('58)は世界的にも大ヒット。「鬼火」('63)は社会との断絶感を抱える青年の自殺に至る48時間を描き、ヴェネツイア映画祭審査員賞・イタリア批評家賞を受賞。ゲシュタポの手先となった17歳の少年を描いた「ルシアンの青春」('73)では英国アカデミー賞作品賞を受賞。その後、米国に渡り、少女娼婦とカメラマンの愛を描いた「プリティ・ベビー」('78)、ヴェネツィア映画祭金獅子賞受賞作「アトランティック・シティ」('80)などを監督したが、10年でフランスに戻る。1987年、少年時代の体験を基にユダヤ人少年との友情と別れを哀切に描いた「さよなら子供たち」を発表。ヴェネツィア映画祭金獅子賞を受賞した。最後の作品は「42丁目のワーニャ」('94)。1995年がんのため死去。他の主な作品に「私生活」('62)、「ビバ! マリア」('65)、「カルカッタ」('69)、「好奇心」('71)、「ブラック・ムーン」('75)、「五月のミル」('90)など。

音楽 マイルス・デイビス

1926年、アメリカ・イリノイ州生まれ。父は歯科医であったため、裕福な環境で育つ。音楽の教師であった母の影響で10 代の頃からトランペットに傾倒。ビバップ(ジャズの一形態)創生期にハワード・マギーやファッツ・ナバロと共に、第一線のビバップ・トランペッターとして活躍したが、ジュリアード音楽院で学んだ後、柔軟性に富んだクール・サウンド・スタイルに移行していく。その後もロックやアフリカ音楽をベースにしたファンク・ジャズや、ブルース/ ポップ/ ヒップホップなども取り入れた音楽を創作し、ジャズの範囲ばかりではなく、常に時代を見据え、様々なジャンルの音楽に注目していった。『死刑台のエレベーター』はマイルス・デイビスにとって初めての映画音楽。

撮影 アンリ・ドカエ

1915年7月31日、フランス・サン=ドニ生まれ。録音技師となった後、撮影カメラマンに転向する。第二次世界大戦後、ジャン=ピエール・メルヴィル監督の長篇デビュー作『海の沈黙』(47)で撮影監督としてデビュー。続いて、メルヴィル監督作品『恐るべき子供たち』(50)で撮影監督を務めている。本作が3作目となり、狭いエレベーターの中でのサスペンス、さらには、当時まだ困難だった時速150km を越える自動車の移動撮影を行うなど、鮮やかな手腕のほどを見せている。ルイ・マル監督作品には、『ビバ!マリア』(57)、『パリの大泥棒』(67)と、3作品に参加。他に、フランソワ・トリュフォー監督『大人は判ってくれない』(59)、ルネ・クレマン監督『太陽がいっぱい』(60)、『生きる歓び』(61)、オムニバス映画『新・七つの大罪』のジャン=リュック・ゴダール監督作品『怠惰の罪』(62年)などフランス映画界を支えた巨星。1987年3月7日、パリで死去した。享年71 歳。

ジャンヌ・モロー

1928年1月23 日、イングランド・ランカシャー州生まれ。18歳の時に、パリのフランス国立高等演劇学校(コンセルヴァトワール)に入学。1948年にアヴィニヨンの演劇祭で舞台デビューを果たし、その後20 代にして、フランスを代表する劇団、コメディ・フランセーズの主演女優の一人となる。1951年以降、端役で何本かの映画に出演し始めるが、本作『死刑台のエレベーター』(57)に主演し、一躍脚光をあびる。1958年には、再びルイ・マル監督の『恋人たち』に出演し、地方に住む有閑な婦人を妖艶に演じた。第一次大戦前後のヨーロッパを背景に3人の男女の愛情と友情をめぐる数奇な運命を描いたフランソワ・トリュフォー監督作品、『突然炎のごとく』では、絶大なる支持を受け、彼女にしか演じられないような女性像をも確立。1960年には『雨のしのび逢い』(60)でカンヌ国際映画祭主演賞を受賞。その後、ルイ・マルをはじめとして、フランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダールなど、ヌーヴェルヴァーグ時代の監督達の作品に出演し、世界的な大スターになったと共に、それらの潮流を代表する顔となった。女優界で華々しい成功を収めた一方で、歌手、作家、プロデューサーとしても活躍。1970年以降には『ジャンヌ・モローの思春期』(79)、『リリアン・ギッシュの肖像』(83)など、監督業にも進出した。生涯を通じて、ジャン・コクトー、ジャン・ジュネ、ヘンリー・ミラーや、マルグリット・デュラスなどといった高名な作家たちと交友を持ち、オーソン・ウェルズからは「世界で最も偉大な女優」と評され、今日に至るまで、最も偉大なフランスの女優であり続けている。2000年にはベルリン国際映画祭で功労賞を受賞。

モーリス・ロネ

1927年、フランス・ニース生まれ。演劇界出身だったが、ジャック・ベッケル監督の青春映画『七月のランデヴー』(49)で映画デビュー。本作『死刑台のエレベーター』(58)で国際的スターとなる。『鬼火』(63)で、再びルイ・マル作品に出演する。その後、100本以上の作品に出演し、1950〜60年代のフランス・イタリア映画を支えた。他に、『七月のランデヴー』(49)、『宿命』(57)、『太陽がいっぱい』(60)、『輪舞』(64)、『マンハッタンの哀愁』(65)、『殺意』(67)、『不貞の女』(69)、『太陽が知っている』(69)、『チェイサー』(77)、『愛しきは女/ラ・バランス』(82)がある。1983年、癌で死去。享年55 歳。

ジョルジュ・プージュリー

1940年生まれ。『禁じられた遊び』(52)のミシェル少年役でデビュー。他に、『悪魔のような女』(55)、『空と海の間に』(56)、『素直な悪女』(56)、『ひと夏の情事』(60)、『悪徳の栄え』(63)、『パリは燃えているか』(66)、『花のようなエレ』(72)に出演。2000年死去。


ヨリ・ベルタン

1940年生まれ。元オペラ座の踊り子で、『モンパルナスの灯』(58)には端役で顔を出していたが、本作でルイ・マルに見出され、ベロニク役に大抜擢される。他に『大貴族』(65)、『修道女』(66)などがある。


リノ・ヴァンチュラ

1919年、イタリア・パルマ生まれ。ジャン・ギャバン主演のジャック・ベッケル監督によるフィルム・ノワールの名作『現金に手を出すな』(54)で映画デビュー。その後、天才画家モディリアーニの生涯を描いたジェラール・フィリップ主演の名作『モンパルナスの灯』(58)で冷酷な画商モレルを演じ、評価を高めた。1960年には、暗黒街の男の友情を描いたジャン=ポール・ベルモンド共演の『墓場なき野郎ども』(60)で主役を演じ、脚光を浴びた。1967年には、アラン・ドロン、ジョアンナ・シムカスと共演した、パリで出会った男女三人の夢と冒険を描いたフランス青春映画の名作、『冒険者たち』(67)で人間味のあるローラン役をユーモアを交えて好演し、人気を確立した。1969年には、第2次大戦下のレジスタンスを描いたジャン=ピエール・メルヴィル監督の傑作『影の軍隊』(69)に主演、さらにシシリア・マフィアの強盗団を描いた『シシリアン』(69)も大ヒットとなり、存在感を放つ、フランス映画に欠かせない名俳優としての地位を確立した。他に『情報は俺が貰った』(58)、『自殺への契約書』(59)、『フランス式十戒』(62)、『女王陛下のダイナマイト』(66)、『ラムの大通り』(71)、『バラキ』(72)、『ローマに散る』(76) など多数の作品に出演。1987年死去。享年68歳。