CCOMMENT コメント

言葉でくくれる関係を、
この映画はひとつずつ崩し、
登場人物たちを個にしていく。
個にして、そしてあらたに出会わせ、
言葉にあてはめることのできない関係を
あらたに結ばせる。

角田光代作家

言うべきことは言わず、
言わなくてもいいことを言ってしまう。
血の繋がりだけで、
否応無く関わり続けなければならない。
家族って、なんて面倒なんだろう。
そう思いあぐねる私に「繋がるか繋がらないか、
すべては自分次第さ」と解いてくれた気がした。

呉美保映画監督

中庭を通って家と家の間を出たり入ったりする子供のあどけない笑顔。大人の狂気。
川のように流れる深い愛情は一瞬にして歯を食いしばらせるサスペンスに急変し、そこから本当のドラマが始まる。
緩急があって美しく、喜怒哀楽すべてを掻き立てる素晴らしい映画です。

ロバート キャンベル日本文学研究者

幻想を省き、
生きるという過酷さから決して背けられない視点。
と同時に、そんな現代社会の中で
傷付いた全ての人達に向けられた、
理解という寛大な包容力。
この映画を見終わった後、私の胸に滞った感覚である。

ヤマザキマリ漫画家

家族の距離、恋人の距離、他者との距離。
超能力のように心を察し、自己のエゴを律することができたのなら、物語はいらないのかもしれない。
分かり合えなく、わかり合いたい事が生きることの全てかもしれない。

渡辺真起子俳優

誰かの手を握りしめる。
その温もりが感情のしこりを溶かしていく。
ただ、それだけのことが簡単なようで難しい。
家族とは、永遠にやっかいで悩ましく、
そして愛おしい。

橋口亮輔映画監督

映画の基調音をなしているのは、移民たちによってナポリという街が少しずつ異化し、瓦解してゆくことへの不安である。『心の通わぬ人たちとどう共生してゆくのか』といういまのヨーロッパに取り憑いている問いへの一つの答えとしてこの映画が用意したのは『心が通っていると思っている人たちとだって、ほんとうは心が通っていないじゃないか』という突き放した洞察である。

内田樹神戸女学院大学名誉教授

旅が多く、ほとんど家にいなかった父の“家に帰る道が、一番好きな旅”という言葉が、今、実感をもってよみがえった。
この映画の老人も、帰る場所がある幸せと、帰る場所を持てなかった者の悲哀を知っている。

永千絵映画エッセイスト

家族とは何か?
それは「距離」だと、この映画は教えてくれる。
近すぎても遠すぎても、お互い傷つけあってしまう。
孤独な主人公にとって、
最も適切な距離にいたのが「ナポリの隣人」
でも、たとえ傷つけあってでも、側にいる人たちがいる。
人はそれを「家族」と呼ぶのだと僕は思う。

中野量太映画監督

孤独な暮らしから、すっかり硬化した偏屈な老人の心が、数奇な事件を通じて、優しく、神秘的な何かに触れる…。
日本と同じ、少子化と高齢化を抱えたイタリアの現代の家族像を浮き彫りにするアメリオ監督の視線は、鋭く、そして温かい。

島村菜津ノンフィクション作家

私たちは愛情がなければ悩み、愛情が多すぎても悩む。
本当の愛情、本当の家族、本当の人間関係って何だろうと、ひたすら切なく考えさせられる傑作。

佐々木俊尚作家・ジャーナリスト

もっとも近くて、もっとも遠い存在である「家族」ですら分断している、という現代の孤独と絶望、そして一縷の希望。主人公が元弁護士ということもあって、静かな余韻が続いています。

水野祐弁護士

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